NPO法人 日向ぼっこ

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全国進路指導研究会夏のセミナーに参加しました。

 8月2日(日)に全国進路指導研究会主催の夏のセミナー「外国にルーツを持つ子ども・若者の現状と学習権保障」情報交換会をオンラインで参加させていただきました。

 現在日本では、街中等で外国語の会話を聞くことがめずらしくなくなっています。地方でも工場などで働く外国人労働者が定着し、それに伴い数多くの子どもがその家族として来日しています。しかし、来日しても日本語が分からず孤立していく子ども達が少なくありません。日本の教育現場はこういった外国籍の子ども達の学習権が保証されているのかとうことを考える4名の方のご報告をお聞きしました。

  1. 前都内公立夜間中学校教員、えんぴつの会、基礎教育保障学会事務局長の関本保考さんは、1978年度から自身が日本語指導した4つの夜間中学での経験と夜間中学の現状についてお話しされました。
     夜間中学は法的根拠のないまま自治体任せで1954年に始まり、2016年教育機会確保法が成立し、夜間中学部分(第 4 章)が即日施行されることになったそうです。現在は、10代~80代以上までの多様な国籍、地域の生徒が在籍し、夜間中学は多様な義務教育未就学者に応える学校となっているそうです。
     関本さんはこれまで外国人生徒に合わせた自主教材の作成したり、夜間中学の生徒がゲストティーチャーとして、昼の小中学校に行き、外国の文化や簡単な言葉などを発表することで生徒の日本語力を高める試みたそうです。外国人一人一人に合わせた勉強をすることで、夜間中学は子ども達への教育保障を通じた重要な学びのセーフティーネットとなっており、重要な意味をもつのではとおっしゃっていました。
     
  2. 一橋大学大学院博士課程、相模女子大・法政大学非常勤講師、教育社会学の谷川由佳さん は、定時制高校の役割について報告していました。
     まず外国人の定時制高校への進学選択の背景として①中学での成績の低さ(学習言語の課題)②経済的困難(不安定な就労形態)③家庭の事情の3つのことを挙げていました。
     定時制高校で獲得されるものとしては、高卒資格だけでなく、読み書き計算など仕事をするうえで必要な基礎的な学力や、境遇の近い日本人や外国人とのつながりなどがあげられるとのことでした。さらに、定時制高校がそこに集う人たちの「居場所」にもなっているのではないかと考えていらっしゃいました。
     谷川さんは定時制高校で身につけた基礎学力は、労働における教養の場となっていて、彼らが将来どんな労働者になるかということに大きく貢献していると語っていました。
  3. 三重県四日市市立笹川小学校教諭/外国人児童集住校の藤川純子さん
     三重県では外国人住民へ情報提供が課題であり、特に高校進学率の低さから2001年から「多言語進路ガイダンス」を実施しているそうです。
     都道府県によって外国人生徒などのための高校入試制度が異なるそうで、進学率に関しては外国人の子どもの高校進学率は60%前後となっており、特定の高校には面接や作文などの特別入学枠などあるが、これらの制度は都道府県や政令指定都市がそれぞれに定めているがバラつきがみられているそうです。
     それを解決するためには、本人の努力とは関係のない進学に対する自治体間の格差をなくすことや、高校中退者を減らし、希望を持って卒業できる人材育成を目指すこと、受験者数や入学者数、在籍者数などを把握し、公立高校の入学資格の扱いを統一することを望んでいるとのことでした。
     最後に藤川さんは外国人の子どもが高校進学を諦めないためには保護者支援や、また学校の先生には「日本の福祉の窓口」として多様性を軸とした学校を作るためにも、もっとサポートが必要なのではないかとおっしゃっていました。
  4. あーすぷらざ(神奈川県立地球市民かながわプラザ)の外国人教育相談コーディネーターの加藤佳代さん が活動についてお話しされました。
     あーすぷらざ外国教育相談では、外国出身の相談サポーターと日本人の相談コーディネーターが協力して、多様な国籍の方が相談できるように曜日により異なる言語のサポーターを配置して、様々な外国人の相談を日々受けているとのことでした。相談に対して進路と将来を見据えてサポートするために他の機関との連携の必要性などを、相談事例を紹介しながら長年取り組んできた内容を報告されました。
     加藤さんは相談事例で見えたこととして、支援者、学校関係者への情報提供や側面支援が必要であること、また必要な情報を提供することだけでなく、それを伝えるタイミングの大切さについても触れていらっしゃいました。

 今回の情報交換会は、「外国にルーツを持つ子ども・若者の現状と学習権保障」情報交換会ということで、7月に行った日向ぼっこ勉強会のテーマ「学ぶ権利」と重なるところがいくつもありました。また、「外国にルーツを持つ子ども・若者」の学習権が中心的テーマでしたが、外国人だけでなく様々な立場の方の学習権をはじめとする人権保障への意識を高めることが必要であると改めて感じ、有意義な時間を持てた情報交換会でした。
 今後も当団体の目的である「多様性が尊重される社会の実現」に向けて、様々な機関との連携や情報交換を積極的に行いながら、活動してゆきたいと思います。

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