NPO法人 日向ぼっこ

勉強会

7月19日勉強会を実施しました。

 東京都は一時期感染者がまた増えてきている中、6月に引き続き7月の勉強会もZOOMで実施しました。スタッフも合わせて9名での勉強会となりました。

 今月のテーマは「学ぶ権利」でした。世界中に環境や文化、様々な理由で「学ぶ権利」に問題を抱えている人達が数多くいます。「学ぶ権利」とは何かについてみんなで考えてみました。

 まず初めにNHKのETV特集「すべての子供に学ぶ場を~ある中学校の外国人生徒の歳月~」を視聴しました。本番組は20年近く独自の取り組みを続けて不就学ゼロを実現してきた岐阜県可児市立蘇南中学校の困難を抱える外国人生徒の「学ぶ権利」ついての番組で、これをもとに勉強会の議論を進めました。

 ある参加者の方からは、コロナウイルスの影響で学校が休校になった時の、韓国と日本の学校の対応の差についての問題提起がありました。韓国ではいち早くオンライン授業実施に向けての動きがあり、パソコンやタブレットなどの機械を持っていない家庭を調査・確認し、無償で貸し出しをする等のサービスをして、オンライン授業を実施しましたが、先進国といわれる日本は「二ヶ月間何もして無かった」。そこには子どもの「学ぶ権利」に対する対策がみられない。にもかかわらず「どうして親は何も要求しないのか」といった疑問の声がでました。それに対し、このことは学ぶ権利だけの問題ではなく、日本の権利意識そのものの低さの問題ではないかという声がありました。

 この権利意識に関連して、初めに観た番組の内容は外国人の子どもの不就学の問題であったが、その根にあるのはマイノリティーに対する共通の問題であり、いろいろな立場の人がいることを認め合う多様性を認める教育が不可欠である。また、スターウォーズを引用され、いつの時代にも「悪」は存在するので、それらに向き合うためにはシチズンシップ教育を充実させ、市民権や政治的問題についての意識を高める必要があるとのご意見がでました。

 また別の参加者の方からは、「教育格差」の問題を指摘がありました。親の経済状況により、進学率や進学先に格差が出ていることは周知の事実であるが、教育格差は子どもが生まれる前からの問題であり、子どもはある程度の経済的な保障がされた状態で生まれないとスタートから人生が左右されてしまうので最初のスタートラインが大切である、現在ある公教育制度の下では教育格差の拡大を防ぐことは難しいのではないかなど、様々な意見が出ました。そして今後の日本においては、この教育における格差は広がるのではないか、さらにこの格差は固定化するのではないかという懸念が示され、それを避けるためには社会構造そのものの変革が必要であるとの意見が聞かれました。

 「学ぶ権利」との関連で「教育を受ける権利」に言及した方もいて、教育を受けることは「自分の権利がどこにあるのか」といった権利意識を高めることになるとともに、自分の価値を知り、自分らしく生きるために不可欠であるとし、「教育を受ける権利」を基本的人権の一つととらえ、「資本主義」では教育を受けることも「自己責任」であるといわれることもあるが、「自分から権利を獲得しないと学べない」というのはおかしい、「教育を受ける権利」の侵害は人権侵害だとする考えもありました。

 その他としては、「学ぶ」ことについては「学校教育がすべてではない」、「自分に出来ることを一人一人やっていけばいいと思う」といったご意見や、教育においても自分さえよければいいという利己主義的な考えでは、結局、十分に学ぶことはできず、お互いに迷惑をかけて、かけられてと「お互い様」の精神の中で学び合うことが重要である、教育を受けることで過去の問題を現代の問題に置き換えて考えることができる、などのご意見がありました。

 勉強会後にいただいたアンケートでは、「教材の内容に即した参加者の方がいたことが良かった。」「’教育’というテーマで話せたのが良かった。」「他の方の意見を聞けて良かった。」という感想をいただきました。

 今回は国籍が異なる方々の参加もあり、日本人とは異なる視点から学ぶ権利について考える事ができ、とても刺激的で学ぶところの多い勉強会になったのではないかと思います。今回も参加してくださった皆様の活発な意見により、テーマについて多様な視点から考える事が出来たのは、当団体の目的である「多様性が尊重される社会の実現」にとっても有意義な時間を持てたのではないかと感じました。  

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