NPO法人 日向ぼっこ

勉強会

7月の勉強会の様子

みなさま

7月9日(日)15時~17時に勉強会を開催しました。

 今月のテーマは、「社会的養護の対象となる児童への医療(特に精神医療)」でした。勉強会にご参加くださった方から話題提供をしていただいた後、皆で質問や感想などを話し合いました。

 まず、話題提供者の方から、児童養護施設における向精神薬の服薬をめぐってこれまでどのようなことが言われてきたのかについてご紹介いただき、その後、児童養護施設における児童が医療を受ける際、当人の意思が尊重され、かつ適正(本人の利益が最大限尊重されること)な医療を受ける権利が保障されるために何が必要であるかなど問題提起をしていただきました。

 具体的には、先行研究や実態調査のデータから、児童養護施設において向精神薬を服用する児童が一定数おり、かつその人数が近年増加している可能性が示されていること、その背景に、服薬のきっかけとしての精神科医との連携があるという報告があること、児童養護施設において医療につながることのメリットや精神科医の関わりの成果、児童養護施設職員による子どもの服薬への受け止め方、などについて様々な意見をご紹介いただきました。また、国連子どもの権利委員会からの勧告や、児童養護施設における向精神薬の服薬のあり方を問う研究、児童養護施設における向精神薬の服薬のあり方を問う報道、児童養護施設における医療を問う指摘、などに加え、アメリカの現状と取り組みについても紹介いただき、それらを踏まえて、今後、日本において取り組まれるべきと考えられる事柄等についてご提案いただきました。

 

 皆さまからは、以下のようなご質問、ご感想をいただきました。

〇児童養護施設の退所者の方の中には、食後に薬を飲む習慣のある方が複数いらっしゃるが、そのことに慣れてはいけないと思った。

〇児童養護施設における医療連携では、職員の立ち位置が難しいのではないか。医療に丸投げになることがないよう、子どもと医者、子どもと心理士の間に入って、適切に調整することが大切だと思う。

〇児童養護施設に入所する子どもの服薬の割合はどの程度なのだろうか。

〇社会的養護の子どもたちの服薬の実態についての把握や経年的な研究が難しい原因は何か。

〇厚労省は、児童養護施設の子どもたちの服薬について、どのような問題意識を持っているのか。

〇児童福祉の領域では、エビデンスに基づいた実践が十分行われていないのではないか。例えば、昨今話題になっている意見表明支援の仕組みについても、どのように導入してどう評価するかという視点が十分ではなく、危惧しているという意見を聞いたことがある。

〇児童への精神医療については、両極的に考えると対立を生むだけになってしまうのではないか。グレーゾーンが大きく、極端に言えばケースバイケースといえるのかもしれない。

〇現実的な問題として、中高生を診断できる精神科医が少ないと思う。

〇9割以上の人が医者に嘘をついたことがある、というデータがあると聞いたことがある。医者と患者の間には、圧倒的な力の差があり、医者に逆らうのが怖いという先入観がある。まずは医者と患者の関係が変わる必要があると思う。

 

また、後日ご回答いただいたアンケートでは以下のようなご意見をいただきました。

〇「多職種連携」「医療へつなぐ」といった言葉は本当によく耳にしますが、講師のご指摘にあったようにどうつなぐかが肝心ということを改めて感じるとともに、これは対人支援といわれる関わり全てに当てはまることではないかと思いました。他方、連携が進んだ結果出入りする関係者が増えてそれが負担という声を聞いたこともあり、それももっともと、この点はちょっと考え込んでおります。

〇「最後は知識経験専門性より関係性」という知人の言葉が改めて沁みました。

〇私の日常ではほとんど話すことのないテーマで、短い時間ではありますが考えるきっかけになります。

 次回の勉強会は、9月10日(日)15時~17時、テーマは「若者へのかかわり方の検討(実践例を含む)」です。

 みなさまのご参加をお待ちしております。

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