NPO法人 日向ぼっこ

勉強会

6月の勉強会を実施しました

 6月20日(日)に6月の勉強会を実施しました。6月のテーマは「自立と社会性」でした。とても難しいテーマでしたが、大学生の方、新聞記者の方、乳児院職員の方、児童養護施設職員の方、特別支援学校の教員の方、一般の企業にお勤めの方などが、ご多忙の中、途中参加や途中退席の方も含め、計8人の方がご参加くださいました。また、ご参加いただいた皆さんのお住まいも、沖縄や、兵庫、シンガポールといつものように多彩でした。

 始めにいくつかある「自立」の概念について、代表的なものを確認して、動画を視聴し、自由討論をしました。今回視聴した動画はNHK障害福祉賞に入選した方の、その後の歩みを記録したNHKハートネットTV「私らしい”自立“」というものでした。

 自立の概念として、厚生労働省は「「自立」とは、「他の援助を受けずに自分の力で身を立てること」の意味であるが、福祉分野では、人権意識の高まりやノーマライゼーションの思想の普及を背景として、「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」、「障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」の意味としても用いられている。」としている。

 その他、岩波国語辞典「自分以外のものの助けなしで、または支配を受けずに、自分の力で物事をやっていく。独り立ち。独立。」大辞林「他の助けや支配なしに自分ひとりの力で物事を行うこと、独り立ち。独立。」広辞苑「他の力によらず、自分の力で身を立てること。独り立ち。」、福祉関連では、古川孝順(福祉学)の「自立的自立―生活主体の自己決定と自己責任に基づいて確保される生活手段のみによって、その生命及び活力が維持・再生産されている状態、依存的自立―たとえ生活の一部を第三者や社会福祉制度に依存していたとしても、生活の目標や思想信条、生活の場、生活様式、行動などに関して、可能な限り生活者自身による自己選択や自己決定が確保される状態。」や草間吉夫(乳児院、児童養護施設出身者、元茨城県高萩市市長)の「自立は自己実現のために不可欠な手段、あるいは達成目標である。自立とは自己実現するための諸能力を高めることである。児童の自立とは、精神的自立・経済的自立・日常的自立を確立しながら、社会的自立を高めていく過程と状態をいう。」、村井美紀(社会福祉学)、広岡智彦(福祉活動家)「自己肯定感と主体性を自立の要件とする。自立とは 「「彼らの心の問題の解決」を汲み、心の問題解決とは、彼らが「自分自身肯定的にとらえ」られるようになり、「自分でやろうとする意欲を主体的に持てるようになること」である。」などを確認しました。

 動画視聴後、まず最初に自立の概念に関する意見として、参加者の方から出たのは「自立という概念が、健常者や中流・上流階級の人達に向けて作った概念である。そのため、その概念に当てはまらない人を苦しめている。」「自立概念は自分で作るのが良い。他人と比べても意味がない。」「自立とは自分の人生に対し、納得、又は前に進んでいけると感じられること。」

 動画の中に登場した方が身体的な障害をお持ちの方で、食事の介助を受けており、その方が「以前、施設にいた頃は食事は訓練だったから楽しむ余裕がなかったが、介助をしてもらうことで、味わうことができるようになった」という発言があり、何でも自分ですることが自立と思われがちであるが、人を頼ることと自立の関係についても意見が出た。「自分のことは自分でという風潮があるが、無理を強いることは自立を阻害するのではないか。」「人は一人では生きていけないので、頼る、頼られるといった関係を作ることが大切ではないか」「サポートを求めることでその人らしい自立ができることもある。」

 さらに「頼る」ということと「依存」との関係についても意見が出た。「依存を健康的に経験していないと自分を大切にできないのではないか」といった意見や、「相互依存」と「共依存」の違いについては「相互依存がプラスの影響を与え合うもの」で「共依存はマイナスの影響を与え合うもの」「相互依存は主語が『私』だが、共依存では『私』がなくなってしまい『あなた』になっている」といった意見が出た。

 そして「社会性」については「言葉のキャッチボールができることである」「聞き上手、話し上手」「コミュニケーション能力とはその場に合わせて、言動がとれる」「相手との関係性を考えて対応できること」といった意見が出た。

 「自立」とは何かは、考えれば考えるほど難しいと改めて感じたが、「それぞれが自分の自立をどうとらえるか」ということが重要となるのではないかと感じた。参加してくださった皆様の活発な意見交換で、今回もとても有意義な議論ができたのではないかと思います。ご多忙の中、ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

 アンケートでは以下のようなご意見をいただきました。

「自分の意見だけでなく、他の人の意見を聞くことができて、自分の考えを深めることができた」

「いつもは同年代の人と話すことが多いので、違った視点でお話を伺うことができてよかったです。」

「答えのある事ではないのと、どこに焦点を当てるかで内容も違ってくるため、難しいテーマでしたが、ゆえにとても有意義なひと時で、業務を進めていく上でも勉強になりました。」「最初はあまり意見が言えませんでしたが、皆さんの意見を聞いて自分の考えを深めることができました。」

「初めての参加でしたが、暖かく迎え入れてくださりありがとうございました。」

「自分の考えだけでは深めきれないところを、他の方々の考え方を知ることで、新たな視点だけではなく、根本的なところからの考え直しができたように感じました。」

「自立について、形ではなく状態であったり、その時々で変わる過程という見方が加わり、何かや誰かを当てはめて考えるものでなく、一人ひとり異なること、その人らしさ、生きることを楽しめることだと思いました。」

「ご提供いただいた動画もとても感動しました。」

来月7月の勉強会は7月18日(日)15時〜17時でテーマは「教育と平等」です。また多くの皆様にご参加いただければと思います。

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